筋肉ダルマ校長side 面白い!この少年は明らかに魔法の発動速度が異常だ。そして同時に発動している魔法の数も桁違い!しかもなんだいこの威力は!「ふははははっ!何だこのマッチの火みてぇなのはよぉ!効かねぇなぁ!!」 この俺が本気で防御をさせられたのなんていったい何十年ぶりだ?しかもこんな子供に!これだから教育者はやめられない!新しい技術形態に新しい才能!もっと見たい!味わいたい!少年、君の奥の手を見せてくれ! ほう、この魔法はスターフォールというのか!名前の通り星が落ちてくるようだ!だが即席だからか規模が小さいのが少し残念だ。このサイズならこの試験場くらいの広さがあれば避けられる者もそこそこいるからな。うちの生徒になったら個人的に全力のスターフォールを見せてもらおう。 一瞬感知範囲ギリギリに何かがいたような……正体が気になりはするがまぁ後でわかることか。少年とっておきのサプライズ演出だろう、気づかないフリをするのも大人の優しさというやつかな。 それにしても彼クラスがまだこの世の中にはいるのか!彼が我が校に入学し、自らの力を高める。そして他の生徒たちも身近にいる魔法におけるある種の頂に刺激を受けてより成長する。最高だ!最高だよ少年!◇◇ 一方その頃主人公 攻撃通らなすぎて通らん!もういっそパフォーマンスみたいに演出にこってやろうか!
吾輩は分霊である。名前はまだない。 と、いうわけで!100キロメートル上空で術を準備中の分霊でーす!今なにをしているかって言うと、魔極光っていう理論だけ考えて下手に実験もできないから放置してた技術の実証実験ですね。物質って圧縮して高圧高温状態になると光エネルギーを放出するじゃないですか。そんな高エネルギー体を作ってぶち当てようって単純明快な作戦です。 圧縮してぶつけるのは前にやっただろって?あぁ、ステラノヴァのことですよね。あれって以外と大雑把な技なんですよ。似ている構造なのはアレですね!手で水飛ばすやつ!でも今からやろうとしてるのは自爆技です。ほら!芸術は爆発ってよく言うじゃないですか!まず前提として魔法には魔力の核が存在します。今回は魔力圧縮の核に分霊魔法の核を流用するわけです。 僕に積まれた高度な思考装置と魔力制御機構。それを駆使して自爆特攻するわけなんですけど、すんごい憂鬱なんすわ。いや、別に特攻が嫌な訳じゃないですよ?僕らはそういう存在ですし、また身体作ってもらえば復活出来ますしね。それはいいんです、身体が消し飛ぶこと自体は。 でも、ですよ?本体さん負けず嫌い発動しちゃってやる気みなぎってるじゃないですか!僕がミスったらしこたま怒られそうで……あぁヤダやりたくない!まぁやるんですけどね、仕事なので。 さーて圧縮圧縮〜ってあっつ!なにこれあっつ!感覚器官も戦闘において大事な役割があるからってその機能のオンオフスイッチくらい付けておけよクソ本体。おっと失礼つい汚い言葉を。クソ熱いんすけど!?え〜っと痛覚機能、痛覚機能……っとあった!どうせ消し飛ぶんだし今こいつを引きちぎっても文句を言う人はいないはず!なんなら宇宙空間に置いていけば爆散するのに巻き込まれないしエコってメリットありますし、引きちぎっちゃ……って痛ってぇ! そりゃそうか神経引きちぎって痛くないわけがないよな。まぁこれ以上痛くなることはないですしね。あぁ〜痛覚器官ないはずなのにちぎったところヒリヒリするよぉ。もうヤダ帰りたい!叫びたい!叫びたいのに空気がないから声が出ない!あぁもう!むしゃくしゃする! さっさと仕事終わらせて甘いものやけ食いしてやる!あとこの痛みをちょっと強めに本体にフィードバックしてやる!僕結構頑張ってるのに目をギラつかせて楽しそうに戦いやがって!ただの腹いせだよこ
『そろそろこちらからも攻めるとしよう。』 フッ、そっちから攻める?何言ってんの?今の僕は目の前にいる筋肉ダルマの射程からは外れている。それに僕が今いるのは上空。空を制するという絶対的優位。見たところこの人(?)は戦士系。なら遠距離でチマチマメテオってれば負けはないはず。ないはずなんだけど……何だこの悪寒は。何か重要なことを見落としているような。 片足が沈む前にもう片方の足で踏みしめれば空中を歩ける。そんなありふれた設置。気付けたはずの可能性。それに気付けなかった代償を僕は不意打ちという形で払うことになるのだった。「えっと……ど、どうやってるんです?」 思わず口から出た疑問。だが、今は戦闘中。相手が自らの手のうちをそう易々と晒すようなことをするわけもなk……「そんなもん簡単だよ。まず思いっきり地面を踏みしめて身体を浮かせるだろ?そしたら空気を踏みゃいいんだよ!空気がいくら目に見えなくて掴めないからって確実にそこに存在するんだ。そしたらそれを足場にできねぇ道理はねぇだろうよ。」 脳筋だ〜!答えてくれたけどすっごい脳筋だ。水の上の走り方で似たようなこと聞いたけども!足が沈む前にもう一歩出しゃいいんだよって聞いたことあるけども!あれば一応バジリスクって実例があるからいいけど宇宙を駆けるってバカじゃん!やめろよ物理法則守ってくれよ!なんだよそこにあるなら踏めるって!せめて魔方を使ってやれよ! はぁ、腹ただしいことにこの筋肉だるま、魔力を使っていない。一応魔力循環による強化はされてるんだろうけど……空気の操作は一切していない。必死に空を飛ぶ術を身に付けた僕が馬鹿みたいじゃないか。なんせ小回りでいえば筋肉だるまの方が上なのだから。最高速度では勝ってる。まだ全てを見たわけじゃないから断言はできないけど。 このまま三次元の高速戦闘を続けていれば僕に負けはない。負けはないけど……勝てもしない。このまま手数でせめて戦闘技術を見せれば合格はできるんじゃないかな。なんかしたの方でなんであの方が!とか校長!?とか言われてるし、きっとこの学校で一番強い。とはいえこのまま終わるのは正直悔しい。すげぇムカつく!まだまだ僕は未熟な身だ。それでも、最後に一矢報いて終わりたいじゃないか! そうと決まれば"アレ"の準備をしないとね。少し時間がかかるから操作範囲ギリギリに分霊を作って速攻大
結論から言うと五号くんのたどたどしい口調はそのままということになった。これもまたイメージの産物で今後増えるであろう分霊くん達の貴重なサンプルにもなるし、時間の経過で五号くんへの認識が変化することでたどたどしいも改善されていくだろうからね。 何より可愛い!可愛いは正義!男色とかは趣味じゃないけど小さい子は可愛いから好きだ。ショタコン、ロリコン扱いはやめてくれよ?子供は宝で、可愛いもの。おーけー? 話は変わるんだけどさ、明日三次試験らしいんだよね。え?急すぎるだろって?父様の書類に埋もれてましたよクソが!誰も悪くない。誰も悪くないんだけど、うーんモヤモヤするなぁ……。これでもそれなりに社会経験ありますし?面接とか余裕っすわ。 前回のアレを見た感じ模擬戦の方も余裕そうだしなんとかなるっしょ!◇◇ なんとかなると思っていた時もありました。そんな僕の目の前には今、化け物がおります。『坊主、どこからでもかかってこい!』 す、隙がねぇ……。どこを攻めろといいんで?とりあえず飛ぶか。「んじゃ、手始めに……ファイヤーボール×1000!」『ふははははっ!何だこのマッチの日みてぇのはよぉ!効かねぇなぁ!!』 払うな払うな!一応バスケットボールくらいのサイズあんだぞ!マッチ扱いは無茶だろ!「じゃあこれでどう……だっ!スターフォール!」 時短の簡易版でサイズ的には微妙だけどまぁ対人的には大丈夫で……しょ?は?「おいおいおい!魔力ゴリ押しだから魔力密度だけはクソ高ぇんだぞ?」 もうなんなの!試験にこんな化け物連れてこんなよ!
つっかれた〜!しっかり寝たはずなのに全然疲れが取れてないや。やっぱりいつものと枕が違うからしっかり寝たつもりが眠り浅かったのかなぁ…… ま、とりあえず適度に分霊くんに観光と買い出しをしてきてもらおうかな。枕の件はその間に何とかすればいいしね!いっそ僕の枕維持専用の分霊を作ろうかな。成長に合わせてピッタリの枕も変わってくるだろうしね!自分用にこだわるなら一から作るべきだよね。 そんなことは後回しにして……いや、枕は大事なんだけどね?一旦五号くんに指示出さなきゃだからね!「さて分霊くん五号よ。君には僕の目、そして手足になってもらいます。僕はテストもあってそれなりに疲れてるからね。この身体を一旦休めようと思う。だから、今から渡すお小遣いの範囲内で観光して美味しそうな物を買ってきて欲しい!わかったかい?」『うん!わかったよミシェルさま!』 ま、そんな風に話しかけてもまだこの子に喋らせることは出来てないんだけどね。まぁ分霊くんたちにはフリップ芸仕込んだから不便はないんだけ……ど?「ん?」『ミシェルさまどうしたの?どこかいたいの?だいじょうぶ?』「しゃ!」『しゃ?』「喋ったァァァァァァ!!!」『どうしたの?ボクもことばくらいはなすよ?ミシェルさまがそういうイメージしてつくったんだよ?はなすのなんてあたりまえのことでしょ?』 イメージ……か。僕にはそれが足りなかったのかもね。僕はずっと分霊くんたちのことを指示通りにだけ動くロボットかなんかと勘違いしてたみたいだ。そうだよね、魔法は幻想を現実にする技術だもんね。 彼らは操り人形なんかじゃない。僕と同じ時間を過ごす相棒たちだ。なんでそんな簡単なことに気が付けてなかったんだろう。でも……僕は気が付けた。これで運用の幅も広がったはず。 あれ?五号くんが幼い雰囲気なのはなんでだろう。もしかしてこれも僕のイメージの問題なんだろうか。いや、それ以外にはありえないよね。魔法はイメージ。固定概念は自由な発想の邪魔になる。「五号くんの言葉がたどたどしいのも僕のイメージに五号くんが幼くなっちゃうような雑念が混じっちゃったから?」『うん!ミシェルさまがボクをあたらしくうみだすイメージしたからボクのねんれいが0さいに設定されたんだよ!だからちょっぴりはつおうがたどたどしいかんじになっちゃってるんだよね。』 やっぱりか…
私は魔法学校入試課の職員だ。今年で18年目でなかなかのベテランだと自負している。これだけ長く働いていればイレギュラーはそれなりに経験しているし、今更慌てることもない。そう思っていた……◇◇ 今日は入試課の仕事の山場とも言うべき入学試験、その初日だ。私たちの仕事は説明、監視、記録の大きくわけて三つだ。「試験、始め!」 何回言ったか分からなくなるほど言ったこの言葉。それでも気を抜く訳にはいかない。いくら優秀とは言っても受験を受けに来た彼ら彼女らの年齢なんて所詮十歳かそこらでまだまだ幼い。試験会場で感じる孤独感と極度の緊張によって何をしでかすか分からない。試験官として未然に防ぐのも私たちの仕事。 そんな私たちをかいくぐって問題行動を起こした受験生はその場で退場となる。まだまだ幼い彼ら彼女には少々厳しい処置だが、規則は規則。来年以降の挑戦に期待したい。先程も言ったが麒麟児、天才、神童などと持て囃されていようと幼い子供。試験の結果は皆似たり寄ったりとなることが多い。毎年一人か二人ほど頭一つ抜けた子もいるにはいるが、それも早熟の範囲内。 真に天才と呼ばれる者になるかを今の段階で見分けることなど不可能。学校という競走の場で切磋琢磨して初めて真の才能の片鱗を見ることができる。才能とは一生をかけて磨いていくものであり、せいぜい十数年しか生きてない彼らから才を見出すのは土台無理な話。それが私の持論だ。「二次試験用意、始め!」 彼は神童と呼ばれる今回最年少のミシェル君か。とはいえ彼はまだ四歳だ。四歳はいわゆるなぜなぜ期だ。そんな時期の彼が天下の魔法学校の入学水準に達することなどまずないだろう。 あの侯爵閣下(笑)の目も息子への愛ゆえに濁ってしまったのだろうか。水準に達したとすれば幼い頃から虐待とも言うべき過剰な教育を施した可能性も……いや、あの親バカに限ってそれはないか。やはり試験の対象年齢が低すぎるのだ。これではまともに受験生を測れない。 長年の経験からこの考えもあながち間違っていないだろうと私は考えていた。だが、私はこの日……本物を見た。無論、持論が間違っているとは考えているわけではない。 私の見ている世界と彼の見ている世界が別物だった。ただそれだけの話だ。